AI前とAI後で、Steamはどう変わったか
AIが本格的に使われ始めた2026年。生成AIが広まる前の2022年と数字を並べると、「ゲームがあふれた」の一言では片づかない変化が見えてくる。
2022約34本
2026約74本
2022年と2026年を並べる
| 項目 | 2022年 | 2026年 | 伸び |
|---|---|---|---|
| 1日に出るゲーム | 約34本 | 約74本(1月1日〜10月16日の平均) | 2倍以上 |
| 1年に出るゲーム | 約1万2,300本 | 2万4,000本以上(見込み) | 約2倍 |
| ゲームの売上(推計) | 約120億ドル | 上半期だけで111億ドル年間は約210億ドル(試算) | 約1.8倍 |
| 同時に Steam にいた人数の最高 | 約3,190万人 | 約4,350万人 | 約1.4倍 |
| AIの使用を届け出た新作 | ほぼなし | 約31%(1〜7月) | ― |
2026年の年間の売上は、上半期の111億ドルに、2025年下半期と同じ103億ドルを足した試算。売上はすべて分析会社の推計で、Valve は公表していない。
出典:SteamDB の集計をもとにした報道から計算(2022年・2025年は年間の本数÷365日、2026年は10月16日までの2万1,388本÷289日)
出る本数は2倍以上。お金は約1.8倍、遊ぶ人は約1.4倍。お金も人も増えているが、本数の伸びには追いついていない。では、その中で何が起きているのか。
01増えた本数の約3分の2は、AIを使ったゲーム
出典:Sulka Haro による2023年7月〜2026年7月の全数調査(5万3,597本)
AIの届け出が義務になる前、AIを使ったと届け出るゲームは月に約13本だった。2026年半ばには月に約530本。AIを使っていないゲームも増えたが、増え方は月に約290本だけだ。
この間に増えた本数のうち、約3分の2はAIを使ったゲームだ。「ゲームがあふれた」の正体の大部分は、AIで作られたゲームの急増だと言える。年ごとに見ると、届け出の割合は2024年の約11%、2025年の約20%、2026年(1〜7月)の約31%と、毎年10ポイントずつ上がっている。
02AIを使ったゲームは、数の割に遊ばれていない
- 約3割新作のうち、AIを使ったゲームの割合
- 1〜3割弱売上のうち、AIを使ったゲームの割合(2025年後半〜2026年)
AIを使ったゲームは、本数では新作の3割を占めるのに、売上ではそれに届かない。レビュー100件に届く率は、AIを使っていないゲームの約半分。しかもこの差は、2年間まったく縮まっていない。AIを使ったから売れないとは限らない(上位にもAIを使ったゲームはある)。ただ、平均すると不利で、その不利は道具が良くなっても消えていない。
AIを使ったゲームの割合。出典:Sulka Haro の全数調査(新作全体・2025年)、TechRaptor の分析の紹介記事(上位100本・2025年)。2026年の上位100本の集計は見つからなかったため、2025年で比べた。
2025年に売れた上位100本のうち、AIを使っていたのは約18%。新作全体の約20%とほぼ同じだ。売れたゲームの中でも、AIを使ったゲームは全体と同じ割合で入っている。AIを使ったこと自体は、ヒットの妨げになっていない。平均で不利に見えるのは、AIで手早く作られた、遊ばれにくいゲームが大量にあるからだと考えられる。
上位100本には大手の作品も含まれる。上位の18本のうちストアで届け出ていたのは半分以下だったと報じられていて、大手でも届け出はまだ徹底されていない。また、届け出は「AIを使ったかどうか」の二択で、どれだけ使ったかは分からない。絵をすべてAIで作ったゲームも、テクスチャを1枚整えただけのゲームも、同じ「AIあり」になる。
03新作は、過去の名作とも戦わされている
- +14.5%2026年上半期の売上の伸び(前の年の同じ期間と比べて)
Steam 全体の売上は過去最高なのに、新作が取れる割合は下がっている。伸びを持っていったのは、すでに出ているゲームだ。新作どうしの競争に加えて、何年も売れ続ける過去の名作とも、客の時間とお金を取り合っている。発売日だけで勝負するゲームより、長く売れ続けるゲームの方が強くなっている。
041日70本以上が出て、売上の94%は「週に5本」ほどが持っていく
本数上位1%
売上約94%
出典:Sulka Haro の全数調査(売上は推計)
売上の約94%は、上位1%のゲームに集まっている。2026年の着地見込み2万4,000本なら、上位1%は約240本。週に約5本だ。
ストアには1日70本以上が並ぶが、お金の面で意味のある勝負をしているのは、週に5本ほどの枠だ。しかも、レビューが1件もつかないゲームが約28%ある。「出せば少しは売れる」時代ではなく、「上の枠に入るか、ほぼゼロか」の時代になっている。2025年のインディーの売上1位「Schedule I」は、ほぼ1人の開発者の作品だ。上の枠は、小さなチームにも開いている。
05AIの使い道は「見える所」から「見えない所」へ移っていく
- 64%アーティストのうち、AIは「業界に悪い影響」と答えた人
- 2026.1Steam がルールを見直し。コードの補助など効率化のAIは届け出不要に
今いちばん使われている「見た目」は、遊ぶ人の目にも作り手の目にも、いちばん厳しく見られる所だ。2章の「AIを使ったゲームは遊ばれにくい」は、ここでつながる。一方、ルールの見直しで、見えない所(コードや作業の効率化)に使うAIは、届け出も要らず、遊ぶ人の評価にも響かない。差がつくのは、こちらの使い方だと考えられる。
06伸びを支えたのは中国の客。日本の作り手のAI感覚とはずれがある
- 85.8%日本のゲーム開発者で、仕事で生成AIを使う人(CESA・2026年)
- 52%世界のゲーム業界の人で、AIは「業界に悪い影響」と答えた人(GDC・2026年)
分析会社は、2026年の売上の伸びの理由の1つに、中国などアジアからの客の流入を挙げている。Steam の客は、英語と中国語の人で3分の2になった。一方で、日本の作り手は世界よりはっきりAIに前向きだ(調査の対象が違うので単純には比べられない)。国内の感覚のまま見える所にAIを使うと、客の大半がいる海外での受け止め方とずれるおそれがある。
小さなチームへの、数字からの答え
- 「1日70本以上」ではなく「週に5本」の枠を狙う。出すだけでは届かない。発売前の「近日登場」のページとウィッシュリストで、上の枠に入る準備をする。
- AIは見えない所から使う。コードや作業の効率化には遠慮なく使う。見た目や声など遊ぶ人が触れる所は、使うなら質を上げ、使い方を正直に説明する。
- 長く売れる作りにする。新作が取れる割合は下がっている。発売後の更新やセールで、何年も売れ続けるゲームを目指す。
- 中国語と英語の客に向けて作る。伸びているのは中国の客だ。翻訳と、AIの使い方の説明を、海外の目線で用意する。
出典
数字には分析会社の推計を含む。Valve は Steam の売上や届け出の数を公表していない。
- 2026年の本数(10月16日までに2万1,388本で、2025年の年間を超えた):Kotaku / 着地見込み:Steam Page Analyzer
- 2022年の本数:Kevuru Games(SteamDB の数字をもとにした集計)
- 売れた上位100本のAIの使用(2025年):Pixel P&L(TechRaptor の分析の紹介)
- AIの届け出、売上とレビューの差、上位1%の集中:Sulka Haro「Three years of AI on Steam」 / 年ごとの割合:PC Gamer
- 2026年上半期の売上と新作の割合(Alinea Analytics):Hitmarker / WN Hub
- 2022年の売上(Alinea Analytics):Game World Observer
- 同時接続の最高:2022年 / 2026年
- Steam のAIのルールの見直し:VGC / 届け出の6割が見た目:WN Hub
- GDC 2026:GDC / CESA 2026:AUTOMATON
- Steam の言語の割合:XenoSpectrum / Schedule I の開発者:Steam コミュニティ